連載「僕の知事選、奮闘記」 〜敗軍の将、兵を語る〜

連載No38 日本茶の「世界ブランド化」戦略 2013/0831

 来年2014年には親日国として名高いブラジルで、サッカーのWカップが開催される。ここもお茶の国際的なプロモーションの場として有望だ。現在ブラジルでも和食がブームだ。リオとサンパウロという2大都市における高級和食店で、前述した「寿司とのカップリング」で供するサービスを試みる絶好の機会ではないだろうか。「沸騰したお湯を陶器の湯冷ましで適温まで冷まし、急須に入れて茶器に注ぎ、漆の盆に載せて、着物を着た女性が客席まで運ぶ」。これらの一連の作業・動作は外人からすると一つの文化的なショーだ。Wカップの最中は世界から人が集まる。特に出場国を始めとした各国からメディアが集まるので、実に効率的な国際プロモーションとなるだろう。(特にリオは2016年のオリンピック開催を視野に入れると、世界プロモーション戦略上、重要な都市だ。)

 これらのアイデアを実行する上で、県として着手すべきは「情報の整理」。お茶以外の農産物や、駿河湾の海産物、あるいは林業による製品など、第一次産業の産品は情報化が遅れている分野だ。(お茶の「情報化戦略」は、その他の農産物や海産物にも汎用性があるはずだ。)

 そこで、第一に「地域別」「商品別」にアクセス可能なデータベースを作成する。次に、それらの情報を発信するために、統一されたデザインフォーマットで県のホームページに載せる。デザインには拘りたい。英語は言うに及ばず、市場を考慮すれば、「中国語」「韓国語」「スペイン語」の表記を備えるべきだろう。

 また、それぞれの商品に関する物語を一緒に載せると一層効果的だ。簡単に言えば、インターネット上に「静岡県産モノの雑誌」を構築する。印刷されたものと違うのは、「今年の出来具合」などの情報が常に更新されるコト。また、その産品が買いたい場合、ワンクリックで注文できる仕組みも欲しい。「やはり、地域の産品はその地域で買いたい」という方もいるだろう。その場合は、購入できる場所とその周辺の宿泊案内や、近隣の名所・旧跡の情報が簡単にアクセスできるようにする。

 生産者の声を載せることで、カリスマ生産者が生まれるだろう。彼らに会うことも、来日のモチベーションを高めるはずだ。これらの情報を整理するためには、インターネットの専門家や雑誌の編集者、あるいは旅行業者なども入れたプロジェクトチームを組織するといいだろう。専門家の力は、絶対に必要だ。素人がやると、一見同じようなものに見えても、必ず失敗する。こういうところにはちゃんとした戦略と投資が必要なのだ。

日時: 2013.08.31|

連載No37 緑茶のアジア市場開拓案  2013/0830

 緑茶の新たな市場としては、インドネシアに特に潜在力を感じている。この国は、世界最多のイスラム教徒が住む国だ。ムスリムは飲酒を禁じられているので、酒以外の飲料に対する関心が高い。インドネシアでは、戦後のオランダからの独立は元をただせば日本軍進軍のおかげだと思われている。従ってかなりの親日で、日本語の学習者が多い。戦争直後、有力者の間では、日本人女性を第2か第3夫人として娶ることが流行していた。(デビ夫人は元スカルノ大統領の第3夫人だ。)彼らの子供世代、つまり半分の血が日本人であるハーフが、インドネシアの財閥で活躍しているそうだ。彼らと組んで「日本茶の販売事業」を行えば、彼らは自分のビジネスの成功のために「日本茶の販売促進」を行う。つまり、静岡県のお茶業者は、現地におけるプロモーション・コストを負担しなくて済む。

 静岡のお茶には「岡部の玉露」を筆頭に、川根茶の「大走り」や掛川の「深蒸し茶」などのおいしいお茶の銘柄がある。コーヒーを参考にしてこれらの銘柄(=ブランド)を整理するといいだろう。(キリマンジャロ、サントス、トアルコなど、コーヒーは地域と銘柄が結びつき、全体としての世界ブランドを形成している。)スターバックスを参考にして「緑茶カフェ」を展開するのも有効だろう。

 掛川には緑茶の香水まである。これは資生堂との共同開発で生まれたもので、ユニセックス(男女共用)だ。ちなみに、資生堂は、中国を筆頭にアジアでは高級ブランドとして定着している。この香水を筆頭に、お茶関連の商品を緑茶カフェで販売するのもオモシロイ。現在の容器もシンプルで悪くないが、ここは一つ「日本」を感じる「漆器」か「陶器」の高級感のあるものを用意したい。お茶の香りには、気を鎮める効果もあるので、室内の防臭剤もイケる。(ちなみに、「河津桜」で有名な河津には、ずばりそのまま「河津桜」というオーデコロンがある。これも売り方を考えれば売れるはずだ。ブランドのところで後述する。)

 緑茶の国際化のもう一つ有力な鍵は、「寿司」にあると思う。寿司は既に世界的に定着している。ロンドンのパディントンという駅の構内には、回転寿司があり賑わっている。モスクワでもお寿司屋さんは大人気だ。世界ブランド化した「寿司」には「緑茶」がホンモノ、という関連づけによるブランド確立が有効だろう。「ホンモノ感」は知的な層にはアピールしやすい。東洋の「サムライの国」「礼儀を重んじる文化国家」である、我がニッポン固有の文化的な生活様式と合わせたプロモーションは、「クール・ジャパン」よりホンモノ感が出しやすいと思う。

 貧しい時代は、「甘い」が「美味い」を意味していた。が、豊かになり、西欧風の食品が入って来ると一般的にカロリー過多になる。豊かになると、「太っている」ことが「豊かさ」を意味しなくなる。知的な層で「ダイエット」が流行るのは万国共通だ。東南アジアでもカロリーを気にする層が確実に増えつつある。お茶は、コーヒーや紅茶と違って、砂糖を入れて飲むことがない。「健康」イメージを持った飲料としてもアピールできるはずだ。(残念ながら、現在は、インドネシアなどでは緑茶にも砂糖を入れて甘くして飲まれている。サントリーの現地のコマーシャルは、リポビタンDの「ファイト一発」CMを彷彿とさせるもので、これでは「知的な健康感」は訴求できない。)

 

日時: 2013.08.30|

連載No36 成長戦略とマーケティング 2013/0829

 マーケティングの原理が分かると、「メード・イン・静岡」の売り上げを増やすために必要なのは、マーケティングに結びつく「情報戦略」であることが明確になるはずだ。マーケティングでは、消費者の行動は、次のようにフロー(流れ)で理解される。

   「認知」 → 「理解」 → 「好意」 → 「行動」

 スタートは、第一の「認知」を得るための情報戦略。まずは、情報を整理するコトから着手すべきだ。整理は戦略的に行われる必要がある。戦略である以上、第一に「成果の定義」が不可欠だ。具体的な例として「静岡のお茶」を取り上げてみる。

 静岡と言えば茶所だが、その地位に胡座をかいてきた、という側面は確かにある。「良いモノであれば売れる」という時代は去った。「良いモノ」を情報として発信する必要がある。しかしながら、闇雲に発信するのは戦略的ではない。

 マーケティングの定義は、

「適切な顧客に対して」「適切な商品を」「最も効率的な方法で」「引き合わせる(=Match)」方法だ。(出典:スポーツ・イングランドの定義「Matching the Best Customer and Best Product in the Best Possible Way」の訳 )ここから、「適切な顧客」を探すことが重要であることが分かる。そのためには、仮説を立ててから市場調査を行うことが一般的だ。

 私はアジアにおける日本茶の販売に大きな可能性を感じていた。お茶に限らず、今後のアジアの購買力が世界的な注目を浴びているコトは広く知られている。世帯平均年収が5千ドルを越えると、その国は経済的には中流社会になり、一挙に消費社会に突入する。社会全体が「物欲に取り憑かれ」、猛烈な消費意欲がわき起こる。

 昭和30年代末の日本がそうだった。昭和39年の東京オリンピックは実に絶妙なタイミングで開催された。昭和40年代に日本は一挙に消費社会に突入し、一般国民の消費エネルギーは凄まじい勢いで一般化した。日本人は「より良い生活」が「物質的な豊かさ」であると信じて疑わなかった。若者はファッション雑誌を読み漁り、生活レベルに合わせて、家とクルマのレベルをあげることが常識になった。「クーラー」「カラーテレビ」「自家用車(カー)」の3Cが、「新3種の神器」と呼ばれた時代だった。

 中国の世帯平均年収が5千ドルを越えたのは2012年だと言われている。日本の10倍の数の消費に熱心な中産階級が彼の国に生まれつつある。インドでも自家用車の所有が庶民の間で一般的になり、タタ自動車などが売り上げを急激に伸ばしている。(これらのプラスの傾向の裏に、環境汚染は進行していることも、昭和40年代の我が国と同様である。従って、先行した日本の「環境問題」への対応力、特に「新エネルギー」産業の確立が、アジア全体にとっても早急に求められる。この点は後述する。)

 

日時: 2013.08.29|

 連載No35 (1)成長戦力①「既存産業の伸びシロ」を情報戦略で伸ばす 2013/0828

 経済政策の目玉は、「アベノミクス」と関連づけて展開する必要があった。アベノミクスの「3本の矢」の3本目の「成長戦略」を静岡で行うとすると、どんな可能性があるだろうか?静岡県の場合、「経済を今以上に成長させる戦略」自体、実はそれほど難しい問題ではない。これだけ豊かな地域も珍しいが、「それらが活かしきれていない」コトは、中央でもかなり知られている。(気候が温暖なせいか、どうも厳しさに欠ける嫌いがある。極限の勝負を挑まない。従って、コストにおける「絞りシロ」と、売り上げの「伸びシロ」の両方が十分に残っている。まあ、お人好しだとも言えるんだが。)

 東京を去る前に何人かの有識者と会い、意見を交換した所、異口同音に「羨ましいなあ」だった。潜在力が高いのだから、それらを顕在化すれば良いのだ。「資源が乏しいところを振興させる」コトと比べたら、実をあげるコトは明らかに容易だと言える。

 「良いモノがあるのに売れない」という問題を解消するのが、まさにマーケティングの役割だ。私が20年の間在籍していた電通という会社は、マーケティングに特化して成功している会社だ。広告はマーケティングの一部に過ぎない。マーケティング戦略の無い広告は、仮に成功したにせよ、その効果は一時的なものに留まらざるを得ない。だから、「マーケティングとは何か?」を理解しておく必要がある。

 マーケティングとは、第一に市場(マーケット)を拡大することだ。次に、市場規模(マーケットサイズ)が限界まで大きくなったら、「市場において競合に勝つコト」が必要になる。そのために「差別化」が行われる。これがマーケティングの基本原理だ。かつて、需要を満たす程の供給力(生産力)が無いころは、「良いモノを作れば売れた」。が、1970年代に需要以上の生産が可能になった先進国では、常に「在庫」というリスクを企業が抱えるようになっていた。そこで、まずは「市場規模」を拡大するための需要拡大策が取られた。

 典型的な成功事例は、自動車産業における「モデル・チェンジ」だ。技術力が高まればクルマの耐用年数は伸びるはずだが、これは需要をむしろ減らすことになる。使えるクルマを買い替えさせるためにGMが考案したのが、定期的なモデルチェンジだった。耐用年数が10年のクルマを4年に一度のモデルチェンジで買い替えさせれば、単純計算では市場の需要は2.5倍になる。新たな需要を喚起するには、「新しいモノは良い」という意味(コード)を一般化させることが効果的だ。それを担ったのが、マスメディアによって作られた「ファッション」という考え方だ。これを「モード(Mode)」と言う。

 つまりマーケティングとは、第一に啓蒙活動によって,「新しもの好き」な消費者を育成することだったのだ。そのために最も効果的な啓蒙活動が、マスメディアを利用した広告だった。広報やPRは広告を効果的にするための基盤作りに効果がある。つまり、消費の需要は「情報」によって形成されるというコトなのだ。

 

日時: 2013.08.28|

連載No34 政策の構成 2013/0827

 地方政府には、交戦権はなく、領土問題もない。しかしながら、県民の財産と生命は守らなければならない。何からだろうか?生命の安全確保は、「他国から」ではなく、「災害から」ということになる。これまでは専ら「自然災害から」だったが、最近は「原発事故」がこれに加わり、重要になってきた、新潟県の泉田知事が、原発再稼働問題で東電に「No」を突きつけたのが記憶に新しい。現時点で静岡県知事に課された最大の「県民の安全問題」は、「南海トラフ」などの自然災害と、「浜岡原発の再稼働問題」だ。(4)で論ずる。(ところで、「浜岡原発の再稼働問題」に関する「県民投票」は、一体いつ行われるのだろうか?確か、川勝県知事は「実施に前向き」だったはずだ。それとも、当方の記憶違いか?もっtも、「前向き」はどっちともとれる発言だ。ビジネスの世界では、期限を切らない口約束など無意味だ。)

 次に経済問題がある。現代は政治と経済が不可分になった時代だ。保守か革新かに関係なく、どの党も、どの候補者も、「経済政策」を打ち出す。「景気を良くし、雇用を守り、増やす」ための政策は、もはや政治にとって不可欠な政策となっている。前述したように、そもそも国家は「国際紛争」に対処するものだから、かつては「経済政策」は必ずしも主要な政策ではなかった。現代の国家は、おしなべて「産業主義国家」だが、それは将に現代の特徴なのだ。)

 私は自民党県連の推薦で出馬したのだから、アベノミクスとの親和性を強調すべきだった。(「民主党に押されて当選した川勝氏」と自民党政権との「ネジレ問題」を強調しておくことは言うまでもない。)「アベノミクスの3本の矢」の3本目の「成長戦略」に絞ることにした。こういった前向きで挑戦的な分野は、私にとっては得意な領域、将に「自家薬籠中」だ。漠然と「成長戦略」を論ずるのではなく、できるだけ具体的に論ずるために、①「既存産業の伸び代を現実化する」コトと、②「新成長分野」を探して集中投資するコトの2つに分けて、(1)で論じよう。①は「情報戦略」に基づいたマーケティングが鍵となる。②は、メタンハイドレード活用の「新エネルギー産業の開発」に絞った。

 (2)では静岡県の農産品のブランド化戦略と「情報戦略」について述べる。

 (3)で述べる「スポーツマンシップ教育」は、私のライフワークと言っていい。そして、前にも述べたように、「これが知事になるとできる」ことが出馬した最大の理由だと言っても過言ではない。

 

日時: 2013.08.27|