連載「僕の知事選、奮闘記」 〜敗軍の将、兵を語る〜

連載No42 新エネルギー産業の裾野は広い 2013/0904

 自動車産業が20世紀後半の産業を支えたように、この燃料電池という新エネルギー産業も大変に裾野が広い産業となる。例えばパソコンやスマホや携帯電話は充電器が不要になる。メタンのカートリッジを交換するだけで、燃料電池のエネルギー補填ができるからだ。となると、家の中から電気の差し込みが無くなるかもしれない。新しい住宅の工法が考案されるだろう。家電も含めた金型が全て変ることになる。大阪や蒲田あたりの中小の金型工場には注文が殺到するかもしれない。

 この技術が事業として成立するための条件は、「コスト」と「小型化」だ。技術は既に完成されているので、コストとデザインが問題になる。コストは量産化されることで問題が解決するだろう。そこで、私は途上国へのODAの活用を検討すべきだと考えている。今後、発展途上国における環境問題は、ますます深刻な問題となるだろう。例えば、中国から日本にPM2.5が飛んできて大問題になっている。世界の環境は国境では区切ることができない。国境とは近代になって確定されたものであり、これまでは世界が物事を決める基本的な枠組み(それをパラダイムという)だった。国連は国境の存在を基本にして、問題が討議される代表例だ。そういう点では、環境問題はポストモダン(脱近代)の問題だと言える。中国は既に開発途上国とは言えないのでODAは使えないだろうが、中国に技術援助して環境問題に対処してもらうことは、日本の環境問題でもある。国際協力の視点から国が大量に発注することで、量産効果が生じ、コスト問題は進展する。

 もう一つの「小型化」問題こそは、トランジスタ・ラジオの例を持ち出すまでもなく、日本のお家芸だ。つまり、新エネルギー産業の確立における日本の立ち位置には、かなりのアドバンテージが見られるのである。政府の新エネルギー産業の投資を静岡に誘導し、静岡が新エネルギー産業の中心となって推進することは、日本国内の経済を牽引し、中小企業に雇用をもたらし、アジアの周辺地域の環境問題を解決することに静岡が大いに寄与するということになる。そして静岡にはその潜在力がある。

 

日時: 2013.09.04|

連載No41 燃料電池の実験都市「浜松」の可能性 2013/0903

 知事選から1週間経った日曜の日経新聞の1面に、「富士山が世界遺産に正式に認定され、三保の松原が逆転で承認された」という大変におめでたい記事が載った。めでたい!同じ面に、「燃料電池車の安全基準として日本方式が採用」という記事が載っていた。実はこれも富士山同様に、日本にとって大変な朗報だ。

 数年前まで、一台1億円といわれていた燃料電池車が、「2年後の2015年には量産車として500万円くらいになる」と、この記事では書かれている。何しろ、日本の工場で生産された燃料電池車が、日本の安全基準をクリアしているために、特別な仕様を何も追加せずに他国に輸出できるのだ。(燃料電池車両を生産する設備には巨額の投資が必要になるため、当面日本国内でしか生産できないのではないだろうか。)燃料電池の量産が目の前に見えてきた。こうなると、燃料電池は車だけにとどまらず、家電製品全てに応用される可能性が出て来る。「安全基準」は、パソコンで言うところの「ウィンドウズ」や「マック」などのOS(基本ソフト)に相当する基本技術であり、そこに日本方式が採用されたのであるから、その意味の大きさは想像できるはずだ。

 ここまでできているのであれば万々歳、「民間に任せればいい」と思われるかもしれないが、そうは行かない。この基本技術は、余りにも基本的なので汎用性が高く、それゆえに社会変革を必然的に生ずることになる。例えば、メタンの備蓄と流通は「電力会社がやるべきか?」、はたまた「ガス会社がやるべきか?」という大きな問題がある。あるいはこれまでの石油会社がガソリンステーションを利用して販売した方が、燃料電池車に関しては便利だろう。いずれにせよ、一定の空間で「備蓄」と「流通」のシステムを決定するためには、実験して、何が最適かを探る必要がある。実験する空間の広さだが、大都市一つくらいのものが望ましい。浜松は政令指定都市であるから、実験都市としての資格は大いにある。ここで一種のスマート・シティー化の特区を申請すると良いだろう。「21世紀のモデル都市」浜松は、世界から注目を集め、世界の政府関係者、地方都市関係者が実地検分のために訪れることになるだろう。当然ながら、その恩恵を「富士山・静岡国際空港」は受けることになるはずだ。

 

日時: 2013.09.03|

連載No40 水素エネルギーと燃料電池 2013/0902

 2013年の3月に経済産業省が愛知県で行った実証実験では、メタンハイドレードからメタンを取り出すコストが激減することが明らかになった。これまではメタンハイドレードを海底から取り出し、地上でメタンを抽出していたのだが、海底においてメタンを抽出し、それを地上に送るコトに成功したのだ。

 ではメタンをどのように使うのか?一つの選択肢は、火力発電の原料にすること。これだと既存施設に若干の改良を施すだけでそのまま使えるというメリットがある。しかし、燃やす以上、どうしても二酸化炭素が生ずる。そこで、ここで生ずる二酸化炭素を「植物の生成」に使うという試みが行われている。植物の「光合成」には、葉緑素と二酸化炭素鵜が必要なので、ここに供給しようというわけだ。これによって、実験段階の数値では、植物の育成を3割くらい早めることが明らかになった。これを浜松の「温室内の花栽培」に活かすことは大いに可能性あり、と見ている。これまでは、電気を取り出す際に生ずる熱をさらにエネルギーとして利用する「コジェネ」という取り組みが有名だった。今度の取り組みは、更に二酸化炭素まで利用できるので「トリジェネ」と呼ばれている。いずれにせよ、エネルギー効率は格段に向上し、コストは反対に下がることになる。

 取り出した「水素」の利用方法として、私が電通勤務時代から最も注目しているのが「燃料電池」だ。中学校の理科の実験で「水の電気分解」があった。これを思い出して欲しい。「水に電気を通して、水素と酸素に分解する」という例のアレだ。「燃料電池」の発電原理は、この逆を行う。つまり、「水素と酸素を合体させて水を生成すると電気が生じる」のだ。この時に、生成されるのは、電気と水と「熱」の3つだ。

 この技術自体が開発されたのは、米ソの「宇宙開発戦争」時代のことだから、かなり昔のことになる。アメリカは、宇宙に飛ばした衛星内の機器に電気を供給するために様々な技術を開発した。そのうちの一つが「燃料電池」だった。「ジェミニ6号」に搭載されていた。(と記憶している。)地球に戻ってきたジェミニを調べたら「燃料電池」による電気供給だけが活きていたそうだ。ところが、その後「燃料電池」は実用技術としては見放される。触媒となる白金に汚れがつきやすく、家電レベルで採用されたら1年と持たないことが判明し、結局この問題が解決しなかったからだ。ところが、この触媒問題に諦めずに取り組んだ企業がカナダにあった。バラード社というこの会社は「多孔質ポリマー」という一種のプラスティック膜のようなものを開発し、よごれを通さないで純粋な水素を取り出すことに成功したのだ。忘れられたと思われていた技術が、10数年ぶりに脚光を浴びることになったのだ。

 「多孔質」、つまり「小さな穴が一杯ある」物質と言えば、セラミックスが思い浮かぶ。日本の出番到来だ。京セラが燃料電池用のセラミックスの開発に成功した。世界的にはドイツのベンツ社が「燃料電池車」の開発で先行していたが、トヨタやホンダが巻き返した。

 

日時: 2013.09.02|

連載No39   メタンハイドレードと「新エネルギー産業」2013/0901

 21世紀の新しい成長産業として最も有望なのは、「新エネルギー産業」だ。20世紀は「石油の世紀」だった。(19世紀は「石炭の世紀」だった。)「石油」は地球上で偏った地域に「偏在」している。従って、常に地域紛争の原因になってきた。東西冷戦構造が無くなって、世界に残った国際紛争の種の最大のものが「イスラム・アラブ」問題になっているが、アラブ地域に石油が埋蔵されていなければ、これほどの紛争は起きていなかったはずだ。例えば、第二次世界大戦中、ヒトラーが(西側の英仏との)「両面作戦の愚」を承知していながら、あえて独ソ戦を開始したのは、コーカサスの石油が欲しかったからに他ならない。あるいは、日本が太平洋戦争を開始した直接の原因となった「ABCD包囲網」は、インドシナにおける石油の利権を日本が確保したことに対するものだった。「石油」は単なるエネルギー問題ではなく、安全保障問題に大きく関与する。

 21世紀が「脱石油」を掲げざるを得ないもう一つの理由は、「燃焼によって生じる二酸化炭素の放出」が「地球温暖化」という環境問題を発生させたことにある。二酸化炭素の濃度が濃くなると、太陽熱が放出されずに大気圏内に留まってしまう。そのために「地球は温暖化される」。既に、世界各地で起きている異常気象の背景に、この問題が存在すると考えられている。従って、なるべく二酸化炭素を出さないようにしなければならないのだが、GDPの伸びと二酸化炭素の排出量は、ほぼ比例する。特に、国民の平均所得が5千ドルを越え、中流社会化する段階、消費意欲が急激に伸び、同時に二酸化炭素の排出量も急激に伸びることが、20世紀の歴史の示すところだ。

 対する国際的な取り組みとして「京都議定書」などが有名だが、必ずしも十分な実をあげていない。何しろこれから「中流社会化」される国は、中国を筆頭にBRICEや、インド、あるいは東南アジア諸国、と次々と控えている。彼らに「二酸化炭素の排出量抑制」を呼びかけても、「アンタ達は、既に中流化が済んでいるでしょ。今更何を」と言うことになる。

「市場の論理」で解決を図ろうと、「二酸化炭素の排出権」の市場取引などという若干イカガワしい仕組みも考案されている。この問題に対する考え方は、以前からはっきりしていた。第一に「偏在(かたより)」ではなく、「遍在(どこにでもある)」ものをエネルギー源にする。第二に、そのエネルギー消費が環境を汚染しないこと。(「地球温暖化」も環境汚染の一種である。)

 こういった視点から、地球上に遍在する「水素」が有望なエネルギー源として浮上した。ただし、純粋な「水素」は爆発しやすく、備蓄と流通が困難だ。そこで、何か別の形で備蓄・流通させる必要がある。天然ガスが一つの選択肢だが、天然ガスも石油同様、存在する場所が偏っている。そこで、天然ガスだけではなく、水素を含んだいろいろな形態が選択肢として検討されている。

 メタンは一つの有力な選択肢だ。幸い、静岡県の浜名湖沖から九州沖にかけて日本の領海内に「メタンハイドレード」というメタンガスを含んだ地層が発見されている。(それにしても、静岡県は何と恵まれているのだろう。「温暖」「風光明媚」「肥沃な大地からとれる農産物」「豊富な海産物」などに加えで、新しいエネルギー資源まで有しているのだ!)ここに含まれているメタンをエネルギー量で換算すると、現在の日本で消費されている電気量の100年分にあたると10年くらい前に推測されている。ここが開発されると、今世紀中、日本は一滴の石油も輸入せずに、電力を時前で賄える。原発も不要になるのだ!(実はこのメタン・ハイドレードの層は、尖閣諸島の近くまで続いている事が判明した。すると、突然中国が領有権を主張し始めた。やはりエネルギーは21世紀になっても国際紛争の種なのか。)

 

日時: 2013.09.01|