連載「僕の知事選、奮闘記」 〜敗軍の将、兵を語る〜

連載No44  農業産品のブランド戦略 2013/0909

 今、日本の農業製品はアジアで大変注目されている。中国でもお金持ちは、「安全で良質で美味しい日本の野菜や果物」を好んでいる。(自国の農産品に対する不信は著しい。)そのアジアでいち早く、「地域の名前をブランド化する」コトに成功したのが北海道だ。

 北海道は道庁の職員をアジア諸国の領事館に派遣し、現地で繰り返し「北海道物産展」を開催した。そこで現地で何がウレセンなのか、ちゃんとしたデータをとった上で、産品を輸出した。つまり「顧客を理解する」(Right Customerを探す)というマーケティングの基本を着実に実行していた。今では「Hokkaido」は、アジアにおいて「高級品」の代名詞になっている。逆に日本で評価されているものをそのまま「こういう良いモノがある」として、現地の嗜好を調べないで輸出し、失敗した自治体もある。静岡県も北海道の戦略を学ぶ(真似る)べきだ。

 アジア各国で販売ルートを持っている有力な小売り企業のトップを静岡に招き、もてなし、静岡の産品に触れてもらえる機会を設ければ、自分の国でも売れるモノを見つけてもらえるだろう。そういう企業と組めば、マーケティングの「調査(リサーチ)コスト」と「販促(プロモーション)コスト」が抑えられ、事業が失敗するリスクも減らすことができる。では、そういった事業家をどうしたら静岡に呼ぶことができるか?

 一つ良い方法がある。アジアでは地方政府の長は、地元の有力事業家であるケースが多い。前述した親日で日本人との混血が力を持っているインドネシアは言うに及ばず、フィリピン等もそうだ。(ベトナムは多少事情が異なる。)静岡県知事が音頭をとって、アジアの各国の知事レベルでのネットワークを構築するために、知事主催で定例の会議を開くと良いのではないだろうか。開催場所は伊豆。賓客達には富士山・静岡空港に降りてもらい、清水港まで陸路で案内し、フェリーで土肥に向かう。会場入りするまでの途上で、駿河湾からの富士山の眺めを堪能してもらうことができる。無論、ここで観光を売り込むことも意図している。「知事」という名前の事業家を公務で呼ぶことができるのだ。話し合うテーマは「アジア・グローカル」。アジアで中央政府を通じないで、地方同士のネットワークでビジネスを行い、「ヒトとモノの交流」を促進する。すると、結果的に安全保障も促進されるだろう。非政府による会議という意味で、「アジア版ダボス会議」という位置づけも可能だろう。名前は「富士山・ダボス会議」。幸い、2013年に富士山が世界文化遺産に認定された。第1回を開くには絶好のタイミングではないだろうか。

 

日時: 2013.09.09|

連載No43 アメリカ国立燃料電池研究所の誘致 2013/0905

 ついでながら、アメリカの国立「燃料電池研究所」のことを紹介しておこう。これはカリフォルニア州立大学のアーバイン(Urbine)校に作られた。(息子)ブッシュ政権の時に、燃料電池の開発予算が突然増額された。ブッシュの背景には石油資本がついているのは有名だ。そのブッシュ政権が「脱石油」を見据えた政策を推進するということは、石油資本が石油の次(ポスト石油)のエネルギー産業でも利権を確保しようと舵を切ったということだ。その前までは、石油資本は、当然ながら「脱石油」には非協力的だった。

 燃料電池のような基礎技術を日本が独占しようとすると必ずつぶされる。(そういう例は多い。例えば「ハイビジョン」の規格は、当時最も進んでいた日本のNHK方式が採用されなかったのは、基本技術をNHK が独占していたからだ。)そこで「アメリカの国立燃料電池研究所のアジア・オセアニア地区の出先機関」を静岡の西部地区に招致することを提案した。そして「アメリカと提携して技術開発する姿勢」を明確にしておくべきだ。(これは産業上の技術開発における「危機管理」の常識だ。)

 20世紀末の産業をリードしたITが、なぜシリコンバレーで生まれたのか。一つの理由としてスタンフォード大学の存在がある。この大学は、国の産業振興と技術開発に関わることを大学の戦略とした。そして大学の周りに産業集積を計って、ベンチャーが育ちやすい環境を作ったこと。これが大きく寄与している。20世紀後半にはヒューレットとパッカードという学生が起業したことが伝説となり、21世紀にはGoogle が新しい伝説を作った。Googleの創業者はスタンフォードの数学科の大学院生であり、データ検索の研究のために大型のコンピュータを自由に使わせてくれたことに対して、スタンフォード大学に同社の株を寄付した。上場した際にスタンフォード大学が株を売却して得た金額はおよそ400億円!だった。かように、新しい産業の開発と、研究機関の存在は切り離せない。世界の優秀な人材を静岡に呼び寄せるためには何が必要か。これを県が考え、国と協力して条件を整えることが、国家戦略としても重要な意味を持つと考える。

 

 

日時: 2013.09.05|

連載No42 新エネルギー産業の裾野は広い 2013/0904

 自動車産業が20世紀後半の産業を支えたように、この燃料電池という新エネルギー産業も大変に裾野が広い産業となる。例えばパソコンやスマホや携帯電話は充電器が不要になる。メタンのカートリッジを交換するだけで、燃料電池のエネルギー補填ができるからだ。となると、家の中から電気の差し込みが無くなるかもしれない。新しい住宅の工法が考案されるだろう。家電も含めた金型が全て変ることになる。大阪や蒲田あたりの中小の金型工場には注文が殺到するかもしれない。

 この技術が事業として成立するための条件は、「コスト」と「小型化」だ。技術は既に完成されているので、コストとデザインが問題になる。コストは量産化されることで問題が解決するだろう。そこで、私は途上国へのODAの活用を検討すべきだと考えている。今後、発展途上国における環境問題は、ますます深刻な問題となるだろう。例えば、中国から日本にPM2.5が飛んできて大問題になっている。世界の環境は国境では区切ることができない。国境とは近代になって確定されたものであり、これまでは世界が物事を決める基本的な枠組み(それをパラダイムという)だった。国連は国境の存在を基本にして、問題が討議される代表例だ。そういう点では、環境問題はポストモダン(脱近代)の問題だと言える。中国は既に開発途上国とは言えないのでODAは使えないだろうが、中国に技術援助して環境問題に対処してもらうことは、日本の環境問題でもある。国際協力の視点から国が大量に発注することで、量産効果が生じ、コスト問題は進展する。

 もう一つの「小型化」問題こそは、トランジスタ・ラジオの例を持ち出すまでもなく、日本のお家芸だ。つまり、新エネルギー産業の確立における日本の立ち位置には、かなりのアドバンテージが見られるのである。政府の新エネルギー産業の投資を静岡に誘導し、静岡が新エネルギー産業の中心となって推進することは、日本国内の経済を牽引し、中小企業に雇用をもたらし、アジアの周辺地域の環境問題を解決することに静岡が大いに寄与するということになる。そして静岡にはその潜在力がある。

 

日時: 2013.09.04|

連載No41 燃料電池の実験都市「浜松」の可能性 2013/0903

 知事選から1週間経った日曜の日経新聞の1面に、「富士山が世界遺産に正式に認定され、三保の松原が逆転で承認された」という大変におめでたい記事が載った。めでたい!同じ面に、「燃料電池車の安全基準として日本方式が採用」という記事が載っていた。実はこれも富士山同様に、日本にとって大変な朗報だ。

 数年前まで、一台1億円といわれていた燃料電池車が、「2年後の2015年には量産車として500万円くらいになる」と、この記事では書かれている。何しろ、日本の工場で生産された燃料電池車が、日本の安全基準をクリアしているために、特別な仕様を何も追加せずに他国に輸出できるのだ。(燃料電池車両を生産する設備には巨額の投資が必要になるため、当面日本国内でしか生産できないのではないだろうか。)燃料電池の量産が目の前に見えてきた。こうなると、燃料電池は車だけにとどまらず、家電製品全てに応用される可能性が出て来る。「安全基準」は、パソコンで言うところの「ウィンドウズ」や「マック」などのOS(基本ソフト)に相当する基本技術であり、そこに日本方式が採用されたのであるから、その意味の大きさは想像できるはずだ。

 ここまでできているのであれば万々歳、「民間に任せればいい」と思われるかもしれないが、そうは行かない。この基本技術は、余りにも基本的なので汎用性が高く、それゆえに社会変革を必然的に生ずることになる。例えば、メタンの備蓄と流通は「電力会社がやるべきか?」、はたまた「ガス会社がやるべきか?」という大きな問題がある。あるいはこれまでの石油会社がガソリンステーションを利用して販売した方が、燃料電池車に関しては便利だろう。いずれにせよ、一定の空間で「備蓄」と「流通」のシステムを決定するためには、実験して、何が最適かを探る必要がある。実験する空間の広さだが、大都市一つくらいのものが望ましい。浜松は政令指定都市であるから、実験都市としての資格は大いにある。ここで一種のスマート・シティー化の特区を申請すると良いだろう。「21世紀のモデル都市」浜松は、世界から注目を集め、世界の政府関係者、地方都市関係者が実地検分のために訪れることになるだろう。当然ながら、その恩恵を「富士山・静岡国際空港」は受けることになるはずだ。

 

日時: 2013.09.03|

連載No40 水素エネルギーと燃料電池 2013/0902

 2013年の3月に経済産業省が愛知県で行った実証実験では、メタンハイドレードからメタンを取り出すコストが激減することが明らかになった。これまではメタンハイドレードを海底から取り出し、地上でメタンを抽出していたのだが、海底においてメタンを抽出し、それを地上に送るコトに成功したのだ。

 ではメタンをどのように使うのか?一つの選択肢は、火力発電の原料にすること。これだと既存施設に若干の改良を施すだけでそのまま使えるというメリットがある。しかし、燃やす以上、どうしても二酸化炭素が生ずる。そこで、ここで生ずる二酸化炭素を「植物の生成」に使うという試みが行われている。植物の「光合成」には、葉緑素と二酸化炭素鵜が必要なので、ここに供給しようというわけだ。これによって、実験段階の数値では、植物の育成を3割くらい早めることが明らかになった。これを浜松の「温室内の花栽培」に活かすことは大いに可能性あり、と見ている。これまでは、電気を取り出す際に生ずる熱をさらにエネルギーとして利用する「コジェネ」という取り組みが有名だった。今度の取り組みは、更に二酸化炭素まで利用できるので「トリジェネ」と呼ばれている。いずれにせよ、エネルギー効率は格段に向上し、コストは反対に下がることになる。

 取り出した「水素」の利用方法として、私が電通勤務時代から最も注目しているのが「燃料電池」だ。中学校の理科の実験で「水の電気分解」があった。これを思い出して欲しい。「水に電気を通して、水素と酸素に分解する」という例のアレだ。「燃料電池」の発電原理は、この逆を行う。つまり、「水素と酸素を合体させて水を生成すると電気が生じる」のだ。この時に、生成されるのは、電気と水と「熱」の3つだ。

 この技術自体が開発されたのは、米ソの「宇宙開発戦争」時代のことだから、かなり昔のことになる。アメリカは、宇宙に飛ばした衛星内の機器に電気を供給するために様々な技術を開発した。そのうちの一つが「燃料電池」だった。「ジェミニ6号」に搭載されていた。(と記憶している。)地球に戻ってきたジェミニを調べたら「燃料電池」による電気供給だけが活きていたそうだ。ところが、その後「燃料電池」は実用技術としては見放される。触媒となる白金に汚れがつきやすく、家電レベルで採用されたら1年と持たないことが判明し、結局この問題が解決しなかったからだ。ところが、この触媒問題に諦めずに取り組んだ企業がカナダにあった。バラード社というこの会社は「多孔質ポリマー」という一種のプラスティック膜のようなものを開発し、よごれを通さないで純粋な水素を取り出すことに成功したのだ。忘れられたと思われていた技術が、10数年ぶりに脚光を浴びることになったのだ。

 「多孔質」、つまり「小さな穴が一杯ある」物質と言えば、セラミックスが思い浮かぶ。日本の出番到来だ。京セラが燃料電池用のセラミックスの開発に成功した。世界的にはドイツのベンツ社が「燃料電池車」の開発で先行していたが、トヨタやホンダが巻き返した。

 

日時: 2013.09.02|